ストーリーを楽しめ!10作品

いわゆるストーリー四コマを集めてみた。ストーリー四コマのよさは、わりと四コマという形式から気軽に読める(途中でオチも、当然頻繁に挟まってるわけだし)ところ。そして、その根底にきっちりと、もしくはゆるやかにストーリーが展開していることで、いつの間にか話に没頭できること。なので、ここでは基本的に完結、もしくは単行本が出ている作品の中で、既刊単行本単位で話が一応まとまっているもの、というのを優先的に選んでみた。

秋吉由美子 まつのべっ!

完結。まるでドラマのようなストーリー四コマ。ストーリー四コマの見本。完璧なストーリー四コマ。ええ、絶賛しちゃいますよ。
松延彩人は幼稚園の新任教諭。彼が幼稚園の先生を目指すきっかけになったのは、幼馴染の女の子の一言だった。小さいころ別れたままのその幼馴染が、なんと女優になってテレビに現れた!しみじみと幼馴染のことを思い出している主人公の前に、まるでその子の小さいころとそっくりな姿、声、そして、主人公に対する態度。そして、呼び方……「まつのべっ!」さえも。
まぁ、そこから始まって、そして幼馴染と再会したりとストーリーが展開していくわけです。
個人的には、まだこの話を読んだことがない、何もこの話について情報を仕入れていないのであれば、まずはとにかく買ってしまって、読んでしまうのをオススメします。一気読みしちゃうこと請け合い。

まつのべっ! 1 (まんがタイムコミックス)

まつのべっ! 1 (まんがタイムコミックス)

湖西晶 ソーダ屋のソーダさん。

完結。「まつのべっ!」がドラマならば、これはどちらかというとノベルゲームのような味わいの作品。少しずつ展開されていく謎や伏線が、最後のエンディングに向けて収斂してゆく様などは、心を捉えて離さない。
舞台は瀬戸内海に浮かぶ小さい島。その島唯一の商店「早田屋」の店主、早田沙和は、その店の客であり、沙和に惚れている青年の斎田光哉に、こう告げた。「斉田くん、私……死んでしもうたみたいなんよ」
何が起こったのか、何が起きていたのか。ほのぼのとしたコメディの中に織り込まれたシリアスのかけらがジグソーパズルのように組み合わさっていくところを楽しんでいくと良いのではないだろうか。1巻で完結。ちなみに限定版はドラマCD付き。ドラマCDの出来もよかったので、そちらの方が入手できるなら、そちらをオススメする。

かがみふみを アシスタント!!

完結ではないが、1巻のラストできっちりまとまっている。
ひょんな事から漫画家のアシスタントになることになった少女が主人公。でもその少女はそれまで漫画なんか描いた事もなく、ベタを塗ったりトーンを張ったりしたことなどなかったのだ。しかもアシスタント先の漫画家は対人恐怖症でひきこもりで……
漫画家ものの漫画作品にハズレ無し、という言葉があるとかないとか。とりあえず私は聞いたことがあるので多分あるんですよ。その言葉のとおり、実際面白い。なんだかんだで作者の自分の経験(と、おそらく願望)が多分投影されてる部分が大きいのではないかと推測しているが、推測にすぎない。とりあえず、主人公の有希ちゃんが可愛いし、その奮闘ぶりが実に良い味を出している一品。
もう一つ、この作品はサービス旺盛で……作中で執筆されている漫画「ローリンすっしー」が同時収録されているのだ。本編とすっしーのリンクっぷりも一つの楽しみになると思う。

アシスタント!! 1 (まんがタイムコミックス)

アシスタント!! 1 (まんがタイムコミックス)

後藤羽矢子 どきどき姉弟ライフ

完結。姉弟恋愛もの。ただし義理。そういう意味では、義理でも近親の恋愛は駄目だという人にはオススメできない。そうでなければ、一読をオススメする。
主人公の姉は、義理の弟が好きで好きで好きで好きでたまらない。就職を機会に、そういう自分では駄目だとも思い、一人暮らしをしていたのだが、進学のためにその姉の下へ弟が同居することになって……
実は比較的古い作品(99年初掲載)なのだが、今読んでも面白さも可愛さもまったく色あせないと思う。もともと後藤羽矢子は美少女漫画(まぁ、ぶっちゃけ男性向けだ)畑だけに、可愛いキャラを描くのがとても得意な作家だと思う。シチュエーションを含め、そういうところから持ち込んできた文法を四コマの文法と上手くミックスさせていると言える。ある意味で、現在の萌えストーリー四コマの基礎的なものを築いた作品と言えるのではないだろうか。

どきどき姉弟ライフ 1 (バンブー・コミックス)

どきどき姉弟ライフ 1 (バンブー・コミックス)

凪庵 天獄パラダイス

完結。百合?百合っつーにはちょっと違うか。百合ロリ(?)なんだそれ。別に恋愛感情があるわけじゃないから、百合じゃないな。うん。
クリスマスプレゼントに「妹」がほしい、と願った主人公の下に、可愛い妹(?)が2人やって来た。しかしその2人は実は天界と魔界のプリンセスで……
1巻はKRコミックスとして芳文社から出たが、残念ながら2巻は出ないことになったということで、この夏に作者自ら2巻を同人誌として発刊した。とりあえずまだ今ならとらのあなメロンブックスに在庫があると思うので、今のうちに買っておくほうがいいかもしれない。

天獄パラダイス 1 (まんがタイムKRコミックス)

天獄パラダイス 1 (まんがタイムKRコミックス)

芳原のぞみ 天使な小悪魔

完結はしていない。3巻の途中までで一つのテーマに決着がつく。でもまぁ、さらに続きが結構気になったりするんだけど。
舞台は銀座の老舗クラブ。そんな店で働く売り上げトップのマリア(本名:そね子)は、ある日デビューした新人に売り上げトップの座を奪われる。その新人はクラブのママの娘で、そして、見た目はほとんど幼い女の子だったのだ……
まぁ、全体的には明るいけれど、取材の成果かいろいろわりとドロドロした水商売の裏側も描いてたり。でもそんなに深刻になりすぎることもない。水商売ものとかが嫌いではなければ。まるかわいいよかわいいよまる。

天使な小悪魔 1 (まんがタイムコミックス)

天使な小悪魔 1 (まんがタイムコミックス)

口八丁ぐりぐら 花と泳ぐ

もうすぐ雑誌連載が完結予定。
ある日突然、幽霊の少女が現れた。そして同居(?)することになるのだが、隣人は実は霊媒師見習いの少女で……
基本的にはほのぼのなのだが、「このままではいられない」という儚さが物語の各所から漂ってくる作品。基本的にはエンディングから逆算して描かれている作品のようで、ストーリーが徐々に展開していく。絵も綺麗で、キャラクタも可愛い。コメディ部分とストーリー部分もバランスもよい。極端に何か強い魅力があるとはいえないが、なぜか時折読み返してしまう作品。

花と泳ぐ 1 (まんがタイムコミックス)

花と泳ぐ 1 (まんがタイムコミックス)

岬下部せすな ふーすてっぷ

完結。
ある日、保護されて児童施設に入所してきた一人の女の子。実は彼女は、裏の組織の暗殺者としての教育だけをされて育てられた女の子だったのだ。そんな女の子が徐々に日常の事を覚え、ステップアップしていく。
設定は重いテーマだが、実際には重い描写はほぼ無い。基本的にコメディとして軽い印象でストーリーも展開されていく。読後感もさわやかで、個人的には良作と感じている。この辺を料理の上手さとするか、それとも扱いが軽すぎるとするかは、個人の好き嫌いが別れると思う。私は別に扱いが軽すぎるとは思わなかったし、作者がテーマをきっちり料理しきったと思っている。岬下部せすなという作家の作品を読んでみたい、と思うときにも良いかもしれない。1冊で完結しているし。

ふーすてっぷ (まんがタイムKRコミックス)

ふーすてっぷ (まんがタイムKRコミックス)

石見翔子 スズナリ!

完結。
実はちょっとストーリー四コマに入れるかどうかは迷った。ただ、少なくとも作者はストーリー四コマを志向してたと思うし、完結への展開はストーリー四コマのものだったのでここに。百合に定評のある著者の百合百合しいお話。ある日突然現れた自分と同じ顔の、猫耳少女との生活を描いている。
基本的には、花と泳ぐと同じように緩やかな日常を描きながら、自分の描こうとするラストへ持っていく形だったと思う。もう少し巻数を重ねつつ、主人公たちがその伏線についてもう少し触れるようにしていってほしかったけれど、現状の終わり方でも十分に完成度は高いと思う。百合が好きな人は是非。

スズナリ! (1) (まんがタイムKRコミックス)

スズナリ! (1) (まんがタイムKRコミックス)

石田あきら 帝立第13軍学校歩兵科異常アリ!?

続刊。
ここに挙げるにはちょっと反則ぎみだったかもしれない。ただ、そろそろ続きが読みたいなーという事を含めて、ちゃんと継続することを祈願する意味で取り上げてみたい。
舞台はファンタジー世界。その中の軍学校、主に歩兵科で起こるエピソード。歩兵科と騎兵科が仲が悪かったり(歩兵科は平民中心、騎兵科は貴族中心)とかは雰囲気が出てていいですね。主人公は怪力娘、他のキャラも多彩で、まぁほぼ女性キャラの萌え要素に関してはかなりオールラウンドにカバーしてるんじゃないでしょうか。2巻の終盤くらいから、軍事演習ということで兵科合同の訓練が始まって、そこからストーリーが動き出している感触があります。
……で、何で反則気味って書いたかっていうと……この漫画、ストーリー部分は主に普通のコマ漫画で展開されるんですよね。そういう意味ではここで取り上げるのは反則かな、と。ただ四コマパートでもストーリー進まないわけでもないし、四コマパートも面白い。で、休載多いんで(苦笑)ちゃんと継続されることを祈願っつーことで、取り上げてみました。ま、半ば番外です。はい。

帝立第13軍学校歩兵科異常アリ!? (1) (まんがタイムKRコミックス)

帝立第13軍学校歩兵科異常アリ!? (1) (まんがタイムKRコミックス)