「のまネコ」商標登録取り下げでAAユーザは「勝利」したのか?

AAコミュニティは勝利していない

avexがダミー会社らしきZENという会社を通じて取得しようとした「のまネコ」関連商標を取り下げる事を発表した。しかしavexのあの対応でAAコミュニティは誰も勝利していない。勝利したとすれば、それは話題を拡大して遊ぼうと思っていた2chの一部の各個人だ。

結果の違和感

もちろん、AAコミュニティと一くくりにしたが、実際にはAAコミュニティなどというものは確固たる主体が存在するものではなく、単に曖昧模糊な雑然とした集まりである。だから要求もそれぞれ雑然としたものであり、そのコミュニティを構成する各個人がそれぞれに違ったわけだ。avexはそれに対して今までまったく対応をとれずにいたわけだが(そりゃそうだ、要するに口々にまったく違った非難と要求が突きつけられていたわけで、誰にどう対応していいかなんていう感覚をあの会社は持てないだろう)、その上で結局今回の発表になったわけだが……実際にAAコミュニティが要求していた事とはかなり違和感がある結果にならざるを得なかったと思う。

AAコミュニティとして要求していたことのうちかなりの共通項は、「のまネコはオリジナルなんかじゃなくてモナーなんだから、のまネコモナーであると認めろ」という部分だったと思う。この部分があって、それにさらに各自においてさまざまな要求があったと考えていいと思っている。もちろん全然違う事を要求していた人間も多いと思うけれど。

マイヤヒフラッシュがavexに公式に認められたことは良いことであった

マイヤヒフラッシュはもともといわゆる「黒フラ」であり、勝手に音楽を利用して作られた著作権侵害はなはだしいものであった。それに注目し、公認して利用したavexの感覚は非常に鋭いものであり、ここまでは良い事だったと思う。正直、今の「既存の音楽を利用して”勝手に”作品を作る事」が許されない世の中、というのは実は私はおかしいと思っている。著作物というのはもともと二次利用されてナンボなものではないか。二次利用される事で文化は発展してきたのではないかと言う思いがある。だからavexがやったことは、少なくとも当初は良い事であったと思う。

何が捻じ曲がったのか?

結局、「のまネコモナーではない」とavexが言い張った事。ここが最大の問題だったのだろう。実際、一部の反発はあったにしろ、その一件があるまでは、AAコミュニティの大勢はavexにマイヤヒフラッシュが利用される事には好意的だったのだ。それで金を儲けようとも、そんな事は気にしていなかった。そこで「のまネコモナーではない」という事を言い出したからおかしくなったのである。だって、あれは、少なくとも当初の「わた」氏はモナーであると考えて作品を作ったものだからだ。それをAAコミュニティは支持してきたのだ。だから「のまネコではない」と今更言われても困るわけだ。

AAコミュニティの勝利とは?

AAコミュニティの(少なくとも大部分にとっての)勝利とは、もともとAAコミュニティの要求の共通部分であるところの「のまネコモナーである事を認めさせる」という事である。つまり、今回のavexの宣言はavexに取っての敗北宣言ではなく、単に一部撤退したにすぎない。avexは負けてもいないし、AAコミュニティは勝利してすらいない。むしろavexの戦術的撤退と、(意識しているかどうかは別として)巧みな情報戦術によって分断され、各個撃破される状況に追い込まれただけであり、烏合の衆の集まりであるところの曖昧模糊としたAAコミュニティの弱点を(繰り返すが、avexが意識してるかどうかは別だ)突かれることによって状況はむしろ悪化しているかもしれない。
それに、例の2chでの殺人予告を効果的に利用する事で、AAコミュニティ以外の大勢にとっては、avexは極めて有利な立場を得る事に成功しているという事も忘れてはいけない。

AAコミュニティは勝利してはいないのだ。むしろ、彼らの前にはより困難な状況が待ち受けている可能性すらある。