オンリーイベントは、18禁問題以外でも壊滅するかもしれない。

法制問題小委員会で検討されていること〜「非親告罪化」と、「間接侵害」

先日来いろいろ検討を続けて来たんですが、「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会中間まとめ」に関する意見募集の実施についてパブリックコメント募集というのがあります。(私家HTML版資料

これで検討されていることに、まぁいろいろあるんですが、その中でも今回ヤバそうなのに「著作権侵害非親告罪化」と、「間接侵害」というのがあるのではないかと気づきました。ちょっとそれについて詳しく書いていってみようと思います。

非親告罪化」って?

まぁ、影が薄い「法制問題小委員会」のパブコメの中でも、こっちの「非親告罪化」はある程度はまだいきわたった方だろうか。要するに、今まで「親告罪」、つまり権利者が訴えなければ捕まえる事ができなかった著作権の侵害について、そのうち一定の範囲を「非親告罪」つまり、権利者が訴えでなくても、捕まえる事ができるようにしよう、という事である。

ではそれが何故同人と関わってくるのか。それは、この話は文脈として「海賊版対策」である、つまり資料の第2節 海賊版の拡大防止のための措置についての中の1項目として挙げられているという事を知っておかねばならない(2 親告罪の範囲の見直しについて)。

ぶっちゃけた話、同人というのはその同人をやっている人間がどう解釈していっても、世間からは「海賊版」として見られがちである、という事を認識せねばならない。たとえば、ドラえもん最終話事件などである。小学館からは同人というかファン文化に温情的なコメントも出ている事件ではあるが、これが訴えられた(後、和解)というのはやはり「海賊版」的なものとして捉えられた部分が大きいのではないか。

しかも、24ページ下部「(5) 仮に非親告罪化するとした場合の範囲について」において、「・ 常習犯については、常習侵害罪のようなものをつくって非親告罪化することは考えられないか」というような提言もなされている。同人というのは取りようによっては、特に継続して一つの作品の二次創作を行っているような場合であると、「常習侵害」であると取られる部分があるのではないだろうか。

「間接侵害」って?

著作権法によって現在検討されている「間接侵害」とは、本人が直接著作物を利用する以外の人間が、他の人間に対して、著作権を侵害させる事を目的として物品などを提供することである。つまり、本人が直接侵害しているわけではないが、他人に侵害させている、もしくは他人が侵害することを容易としている場合、という事になる。第6節 いわゆる「間接侵害」に係る課題等について (司法救済ワーキングチーム関係)から記述されている。具体的な例示としてはクラブキャッツアイ事件、つまりいわゆるカラオケ法理などが挙げられている。正確には、今までは「カラオケ法理」のように、少しアクロバティックな技を使わないと、差止請求が出来なかったわけだけれど、まぁ「間接侵害」の枠を作って、きちんと法的に「これは間接侵害に当たるから違法です」と言えるようにしよう、っていう事だ。

これも結構同人としてはヤバイ。今までカラオケ法理などで、すでに「間接侵害」的なものは違法化されていたとはいえ、直接的に「間接侵害」というものが設定されるからだ。しかも、その一例として示された案がこれだ。

他者に行為をさせることによるものも侵害に当たるとした上で、その一例として、専ら侵害の用に供される物等の提供等を行うことを例示する。なお、このような、「専ら侵害の用に供される物等の提供その他の行為により他者に(侵害)行為をさせることにより侵害をする者」とは、言い換えると、その行為により、他者の侵害行為をそのコントロール下に置いており、(その行為をやめること等により)この他者の侵害行為を除去し、ないし、生じさせないことができる立場にある者のことであるといえる。

(75ページ 「(3) 間接侵害に係る一例としての立法案の検討」)

じゃあなんで「オンリーイベント」がヤバイのか。

いわゆる「オンリーイベント」、「オンリー即売会」は、以前にもちょっと書いたが、「ある作品やテーマの二次創作を主体とした同人誌の即売会」だ。たとえば、「らき☆すた」オンリー、であれば、「らき☆すた」というキャラクターについての同人誌を中心としてサークルが募集され、そこではその作品やテーマに沿った形での同人誌の頒布がされる。作品のみではなく、テーマ(たとえば、眼鏡っ子オンリーとか、非電源ゲームオンリーとか……)という事もあるが、今回は関係ない。今回関係するのは、あくまでも作品・キャラオンリーでの、同人誌即売会だ。

オンリーイベント」は、特定の著作権物にそのイベントの趣旨を設定し、その同人誌を書くサークルを募集する、という事になる。当然そこで頒布される同人誌は、「特定の著作物の著作権を侵害している可能性が極めて高いもの」のみとなる。オリジナルの同人誌が売られることもない(まぁ、ついでに売るサークルくらいはあるかもしれないが。基本的には、である)。

つまり、前に述べた、今回のパブコメ募集での小委員会での結論としての案、「他者に行為をさせることによるものも侵害に当たるとした上で、その一例として、専ら侵害の用に供される物等の提供等を行うこと」と言えるのではないだろうか。物を提供しているというよりは、「場」を提供しているわけではあるが、「等」であり、そういったことを主催する、という事が、「間接侵害に当たる」という結論は、容易に導きだせそうな気がする。

当然著作権者にとっては、一つ一つの事例を訴えていくよりは、元のイベントを潰してしまった方が(まぁ、潰したいと思っている場合には)楽である、という事は言うまでもない。「間接侵害」規定が無い場合は、一つ一つのサークルを潰していく事を考えることになったのが、「もう面倒だから、イベント自体やめさせればいいんじゃないか」という発想をする著作権者があってもおかしくはないと思う。

さらに、「非親告罪化」コンボ。

オンリーイベントは、その性質上、ある意味で「海賊版」とみなされかねない「同人誌」を頒布する場所である。したがって、「海賊版」に対しての非親告罪化が決定した場合、「間接侵害」とのコンボで、「著作者以外の第三者」が、オンリーイベントを訴える、という行為を行う事が可能になってしまうのではないだろうか。また、ここまでは18禁とは関係なく論を進めてきたが、仮定として18禁の同人誌が多く頒布されるオンリーイベントに関しては、公的権力、たとえば警察などの独自の判断で、間接侵害を理由にイベントをまず潰す、という事がありえるかもしれない。

じゃあどうすればいいんだよー

結局、パブリックコメントを出して、今回の案を潰していくしかないのではないだろうか。
現在私もこの件についてのパブリックコメントは練っている最中である。一応ちょっとぎりぎりに近くなってしまうが、11日か12日には、このはてなダイアリーへ書けるようにしたいと考えている。

しかし、出来ることであれば、各自がこの問題について(特に、自分に利害関係があると考えるのであれば)考えてみてほしい。ってか、誰かてつだってーっ。